9つの分科会、2つの特別セッション、「科学技術」、「ガバナンス」、「ファイナンス」に関する統合セッションの開催
第4回APWSに参加をした首脳級は、首脳級会合において、第4回APWSに参加をしたリーダー、専門家、科学者、そして、すべての関係者に、「熊本宣言文書」の趣旨を踏まえて、「水関連分野において、ガバナンス、ファイナンス、科学技術の 3 つの分野で変革と改善を行うための障壁、突破口、機会、推進方法を特定し、徹底的に議論してほしい。特に、科学技術については、リーダーの分野横断的な意思決定において、どのような役割を果たすべきか答えを導いてほしい」という問いを投げかけた。この問いに基づき、首脳級会合後のサミット1日目の午後、及び、2日目の午前に、国内外の機関が共催した9つの分科会を開催した。各分科会では、水関連SDGsを達成し「質の高い成長」を確保するための配慮事項を明らかにし、それを下支えする「質の高いインフラ」をハードおよびソフト両面から着実に整備していくために必要な行動について、ガバナンス、ファイナンス、科学技術の観点から議論を行い、政策提言が発信されたほか、アジア太平洋地域の先進事例を共有しつつ、各国の状況に応じた課題解決へのアプローチが提示された。(表1 :分科会トピック・タイトル・共催機関、表2:各分科会の概要、及び、主要提言)
また、特別セッションとして、アジア太平洋地域の「質の高い成長」実現に向けて、都市から国スケールの事例と教訓を発信した「ショーケースセッション」、及び、アジア太平洋地域の島しょ国が抱える課題に注力した「島しょ国セッション」を開催した。(表3:特別セッション主催機関、及び、セッション概要)
サミット2日目の午後には、ガバナンス、ファイナンス、科学技術の観点から、9つの分科会からのメッセージと提言を包括的にとりまとめ、首脳級からの問いに答えた統合セッションを開催し、具体的な行動提案を提示した。(表4:統合セッションの概要・主要提言)
表1:分科会トピック・タイトル・共催機関
1: 水と災害/気候変動 | |
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気候変動の下で持続可能でレジリエントな道筋に移行するための関係当事者全員による エンドトゥエンドの努力 |
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【国内機関】水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)、水と災害ハイレベルパネル(HELP)事務局、文部科学省、環境省 【国際機関】アジア開発銀行(ADB)、世界水パートナーシップ(GWP)、国際水管理研究所(IWMI)、国際山岳開発センター(ICIMOD)、国際自然保護連合(IUCN)、 太平洋共同体事務局(SPC)、国連ハビタット(UN-HABITAT)、国際アラル海救済基金執行委員会(EC-IFAS) |
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2:水と食料 | |
アジア地域の農業部門における持続可能な水管理 | |
【国内機関】農林水産省 【国際機関】IWMI、EC-IFAS、国連食糧農業機関(FAO)、ADB |
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3: 水供給 | |
すべての人の安全で安価な飲料水への普遍的かつ平等なアクセス | |
【国内機関】国際協力機構(JICA) 【国際機関】ウォーター・インテグリティ・ネットワーク、 UN-HABITAT |
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4:衛生・汚水管理 | |
持続可能な開発に寄与する適切な汚水管理の実現に向けて | |
【国内機関】日本サニテーションコンソーシアム、国土交通省(下水道部)、環境省 【国際機関】UN-HABITAT |
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5: 水源から海までの水と環境 | |
水源から海までの水と環境: 持続可能な自然・社会環境のためのマルチレベルガバナンス | |
【国内機関】土木研究所流域水環境研究グループ、国土交通省(河川環境課)、リバーフロント研究所 【国際機関】GWP、ユネスコ アジア・太平洋地域科学局、EC-IFAS, IUCN |
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6: 水と文化と平和 | |
水を通じた平和と地域の安定-歴史と文化から学ぶ― | |
【国内機関】政策研究大学院大学(GRIPS) 【国際機関】ユネスコ, GWP |
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7: 水と貧困/ ジェンダー | |
貧困削減とジェンダー平等を加速させるための水セクターにおける科学と政策の協働 | |
【国内機関】東京大学未来ビジョン研究センター 【国際機関】GWP |
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8: 地下水を含む健全な水循環 | |
質の高い社会を構築するための健全な水循環の維持・回復 | |
【国内機関】熊本大学、内閣官房水循環政策本部事務局、国土交通省、熊本市 【国際機関】ユネスコアジア・太平洋地域科学局, 国際地下水資源アセスメントセンター(IGRAC)、ウォーター・スチュワードシップ・アジア・パシフィック |
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9:ユースによるリーダーシップ、イノベーション | |
アジア太平洋地域における水の安全保障とレジリエンスのための有意義な若者の参画 -持続可能な成果のための世代間パートナーシップの構築 | |
【国内機関】 ユース 水フォーラム九州、九州大学 【国際機関】 ADB (Youth for Asia), GWP |
表2:各分科会の概要、及び、主要提言
水と災害 |
気候変動によって激化する水災害は、人工的な環境や自然環境に直接的に影響を及ぼす。その影響は、水・食料・エネルギーとのネクサス、人々の生活の質(クオリティオブライフ)にも伝播し、貧困、健康、教育、労働とも密接に関係する。また、一度、社会がそのような状況に陥ると、ジェンダー、平等、平和などの分野でさらなる問題が発生する。我々世界は、新型コロナウイルスによるパンデミックを通じ、普段は社会・経済・環境システムに内包されている複雑で連鎖的・システム的なリスクが、空間や時間の境界を越えて突然出現し、人類を脅かすことを既に学んでいる。 |
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水と食料 |
アジアにおける農業(灌漑)の観点から、生産的あるいは効率的で包括的な水利用を増やすための適切な方法と技術を共有し、SDG6.4を促進する方法を議論。また、SDG7.2「小規模水力発電や太陽光発電を活用した再生可能エネルギーへの転換」、SDG13.1「気候関連災害や自然災害に対する回復力・適応力の強化」やSDG2.4「適切な農業水管理」といった他のSDGsとの有効な結びつきを明らかにした。 |
水供給 |
SDG6.1を達成させるには、単にアクセスを拡大するだけでなく、水供給の強靭性、包括性、持続可能性を確保することが重要である。本分科会では、都市の水供給に焦点を当て、SDG6.1の達成に必要な原則を理解し、今後の都市水道の具体的な行動とグッドプラクティスについて「科学技術」、「ガバナンス」、「ファイナンス」の観点から議論。 |
水と衛生/ |
アジア太平洋地域における汚水管理の加速と改善の緊急かつ不可欠な問題について議論。 |
水源から海までの水と環境 |
本分科会は、互いに教訓を共有し、新型コロナウィルス感染症からの復興にながる経済発展と環境保全の組合せ、官民の連携、地域、国内、国際の各レベルでの利害関係者での協力、継続的かつ広範な生物調査を含む水環境管理のシステム、及びグリーンインフラの整備について議論を深め、合理的かつ実行可能な手法を見出し、長期にわたる活動に取り組むために必要なことを提言。 |
水と平和・ 文化 |
水を共有する人々の交流の歴史や、人と水との関係から教訓を学ぶことを目的に開催された。 このセッションでは、HELPのハン・スンス議長が、2022年3月に開催された第9回世界水フォーラムで公表した「変化する気候化における渇水リスク管理」に関するHELP原則を紹介した。 |
水と貧困・ ジェンダー |
社会経済的に脆弱な人々の生活改善に貢献する水災害リスク軽減やジェンダー改善、水衛生についてのアジア太平洋地域での先端的事例を紹介するとともに、持続的な開発に向けた実践的な政策策定や介入について議論。特に、科学的根拠に基づき貧困と長期的な水災害リスクの軽減を両立する気候適応策や、ジェンダー平等を推進するための4つの行動領域(組織のリーダーシップとコミットメント、変化を促すジェンダー視点の包含と分析、意思決定とパートナーシップにおける意味ある包括的参加、資源への平等なアクセスとコントロール)について議論を深めた。 |
地下水を含む 健全な水循環 |
本分科会では、地下水を含む健全な水循環の維持または回復に向けた、ガバナンス、ファイナンス、科学技術に関する知見を共有し、今後、アジア・太平洋地域各国が取り組むべき具体的な行動の提言を行った。 |
ユース |
有意義な若者の参画は、若者のためにではなく、若者を「自分たちが直面する課題の専門家」として重視し、それは開発において意義深い貢献をもたらすことになる。若者と大人は、共有価値のパートナーシップとして協力することが大切であり,それによって、専門知識や経験を共有し、両者双方の価値を創り出し、共通の目標と共同の責任感や共有する意思決定を保持し、しっかりとした信頼・尊敬・互恵性の上にパートナーシップを構築することになるのである。 本分科会では、あらゆるレベルにおける有意義な世代間パートナーシップのあり方について洞察し、アジア太平洋地域における水の安全保障とレジリエンスのために、若者の意義ある参画をどのように強化していくことができるかを議論した。 |
表3:特別セッション 主催機関、及び、セッション概要
ショーケース: (主催機関) ICHARM |
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この特別セッションでは、ガバナンスを整えるために、都市~国の4つのスケール事例から、科学技術を活用したモデルイニシアティブと教訓を共有した。 |
島嶼国セッション: (主催機関) 水と災害ハイレベルパネル(HELP)事務局 |
小島嶼国は、その地理的・気候的特徴から、多くの固有を課題を抱えているが、アジア・太平洋水サミットの対象国49カ国のうちの四分の一を太平洋の小島嶼国が占めており、アジア・太平洋地域の水問題を議論するうえで、小島嶼国固有の問題に焦点を当てた議論は非常に重要である。 本セッションでは、島嶼国特有の水・衛生問題や気候変動による災害への脆弱性について議論することで、小島嶼国発展途上国における仙台防災枠組、持続可能な開発目標、パリ協定の実施と目標達成に向けた共通の課題や今後の取り組み指針について議論した。議論の成果は、サミットの成果文書に反映されるとともに、2023年の国連水の行動10年中間レビュー会議、2024年の第4回小島嶼開発途上国(SIDS)国際会議の開催を見据え、本年5月にバリで開催される「第7回防災グローバルプラットフォーム」、9月にブリスベンでの開催が予定されている「アジア・太平洋災害リスク軽減閣僚会議(Asia-Pacific Ministerial Conference on Disaster Risk Reduction)」、水の行動10年、仙台防災枠組、持続可能な開発目標の各中間評価や各締約国会議等にインプットしていく。 |
表4:統合セッションの概要・主要提言
科学技術
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[国内機関] 水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM) [国際機関]ユネスコ |
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観測システムや数値モデルの大幅な改良に伴い、データや情報は爆発的に増大し、流通速度も速くなった。その一方、多様性や正確さに関する問題にも対処する必要が生じている。このような課題を克服するためには、急成長する情報科学技術の流れの中で、水と気候分野の連携の下、水に関する諸問題を解釈し、解決していくような科学技術の分野間協働を確立することが必要である。また、ステークホルダーと科学者の双方向のコミュニケーションを促進し、データや情報を感じ、受け取り、共有し、経験や知識、アイデアを交換し、協力を促すことによって社会的利益を生み出すために、科学と社会の間の協働を促進することが必要である。また、これらのことは、人材育成にも反映されるべきものである。 本セッションでは、各分科会とショーケースからの提言を総括し、主要メッセージとして、次の3つを発信した。 ・観測、モデリング、データ統合に焦点を当てたオープンサイエンス政策を加速し、水循環に関する知の統合を促進する。 |
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ガバナンス | [国内機関] 国土交通省水管理・国土保全局 水資源部 [国際機関] 世界水パートナーシップ(GWP) |
アジア水開発展望2020やSDGを含む鍵となる水ガバナンスの経過を参照するとともに、9つの分科会の見解を統合し、IWRMの4つの視点(環境整備、制度と参加、管理ツール、資金調達)から水ガバナンスの改善について議論を深め、2030年までにアジア太平洋の水の安全保障を達成するための機関、世代を跨ぐ関係者との最適な協調に向け、水ガバナンスを前進させるための提言の取りまとめをリードしつつ、水ガバナンスにおいて直面する課題を議論した。 このセッションの成果は、9つの分科会から引き出されたアジア太平洋地域において水ガバナンスを前進させるための8つのハイレベルな提言と19の具体的行動の策定である。 1. 政策的な一貫性を増進する。「水源から海まで」及び統合水資源管理の取り組みや健全な水循環の回復、SDGsの達成を考慮に入れつつ、地域、越境、国レベルにおいて、水関連セクターに跨る重要な法令、規則、政策、基準を制定又は完全実施することを展開又は加速させる。 |
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ファイナンス |
[国内機関] 国土交通省水管理・国土保全局河川計画課国際室 |
ファイナンスに関する各分科会からの提言やアジア太平洋地域における水資源管理、水サービスの提供、防災対策に関する好事例を統合し、どのようにしてi)政府部門、ii)民間部門を最大化できるか、また、どのようにi)とii)の効率的に組み合わせることができるかについて議論し、以下の提言をまとめた。 |